勝海舟とミカエル衝動


占星術作家と名のる山内雅夫氏が『歴史読本』(「勝海舟 幕末維新に賭けた夢 1990 年1月号)の中で、こういうことを言っている。

当時の船乗りは洋の東西を問わず、迷信深かった。中でも、船を航海するにはその位置 を確認するため、天文観測儀を使う天体観測が必須科目である。勝は案外「西洋占星 術」を学んでいたのではないだろうか。彼は生前、つねづね「明治三十二年(1899年)に 大乱がおきる」と予言していたそうである。この予言が何にもとづいているのかは明ら かにされていない。しかし、明治三十二年に何が起きたかをみれば自ずと明らかであろ う。この年の一月、予言者その人が死んだからだ。

この時期、宇宙史的な視点から見ると何が始まったのか?

シュタイナーによれば、この次期(1879から)、大天使ガブリエルに替わって、大天使 ミカエルの統治が始まったのである。みなさんはこう思うかもしれない。「それがわれ われと何の関係がある。それは白人の宗教ではないか」、と。だが正確に言うと、それ は違う。キリスト教は小アジア、つまり西洋と東洋の間に生まれた宗教なのである。日 本人はインド人の宗教であった仏教を受け入れてしまった。今日日本人は「あれはイン ド人の宗教ではないか」とは言わない。その間、歴史的に何が行われただろうか。日本 人は神仏習合という現代の合理的思考から見れば、奇妙としか思えない思考方法によっ て、神と仏を一体化してしまった。しかし、これこそが未来の神学にとって真実の考え 方なのである。このような考え方は先祖の詭弁的思考によって生じたのではなく、実は ある霊的な根拠を持っている。(渡部昇一氏はすでに何かを感じ取っているようであ る。)しかし、学者をはじめとして、「世界を物質的にしか解釈できない人にとっては- ---これがアカデミックな思考方法の前提である。かくて神も仏も信ぜぬ宗教学者という 奇妙な存在が、一方で受け入れられ、社会的権威を持つような時代になった----このよ うな思考方法は何の意味もないであろう。私が言いたいのは、「将来世界的な宗教の習 合、あるいは解釈の変更が行われるであろう」、「今までそれぞれ違う神々を拝んでき たと思い込んでいる世界の住人たちが、実は同じ神々を拝んでいたのだと理解できるよ うな時代がやってくるであろう」ということである。

以下さらにシュタイナーから引用する。

「ガブリエルが統治するとき、つねに、そのあとにくる時代、諸民族がたがいに分か れ、分化し、民族主義になる時代が準備される」ということができます。

「ミカエルの時代に入った現在、どうして強固な民族主義的要素が地上に現れているの か」と皆様はおききになるかもしれません。

それは霊的には、すでにずっと以前に準備されていたのです。それはさらに作用をつづ け、そして、弱まっていくのですが、その痛手は長く残り、しばしばその当時よりも重 大な事態になることがあります。次第次第に、ミカエル衝動は、現在大部分ガブリエル の支配下に取り残されている者のなかに入ってゆきます。ミカエルの時代がはじまる と、いつも、地上の人類はすべての民族的な区別を克服し、ある特定の時代に生まれた 最高の文化、最高の精神的内容を、この時代に地上に生きるさまざまな民族の上に広め たいという憧れが生じます。

ミカエルの統治下においては、つねにコスモポリタン的な原則が流布し、言語に関わり なく、霊的なものに到達できる民族に最高の霊的なものを拡張するのがミカエルの時代 の特徴です。(シュタイナー『輪廻転生とカルマ』)


民族が消えてなくなるというのではない。ある民族が他の民族を眺める方法が変化する のである。今までは「民族こそ紛争の種」だった。しかし将来「民族こそ友愛の種」と 呼ばれる時代がやがてくるだろう。われわれもまた「考え方」を自発的に変化させなけ ればならないのである。